「社長、どうしますか?」が1日10回。社長が忙しすぎる会社の構造的な原因と解決策
社長に判断が集中して忙しい中小企業の構造的原因を分析し、社員が自分で判断できる仕組みの作り方を解説します。
社長の1日を振り返ってみてください
朝、メールを確認する前に社員から「この見積、出していいですか?」と聞かれる。10時の会議で「値引きを求められましたが、どうしますか?」と確認される。昼前に「採用面接の日程、社長の都合は?」。午後は「この案件、受けますか?」「来月の発注、増やしていいですか?」。
夕方になってようやく自分の仕事に取りかかるが、もう頭が回らない。社長が本来やるべき中長期の戦略、新規事業の検討、顧客との関係構築は後回しになる。
これは「社員が悪い」のではありません。会社の仕組みの問題です。
判断が社長に集中する3つの構造的原因
第一に、判断基準が社長の頭の中にしかないことです。粗利率がどのくらいなら受注していいのか、値引きはどこまで許容するのか、採用はどの条件なら進めていいのか。こうした基準が明文化されていないから、社員は毎回社長に聞くしかありません。
第二に、社員が判断の練習をする場がないことです。判断基準を知らない社員は、判断の仕方がわかりません。結果として「聞いた方が早い」という文化が固定します。
第三に、間違えたときの責任が怖いことです。自分で判断して失敗したら怒られる。それなら社長に聞いて、社長が決めたことにする方が安全。社員がそう考えるのは合理的です。
解決策は「社長の分身」ではなく「判断の型」を渡すこと
社長がもう1人いればいいのに、と思うかもしれません。しかし本当に必要なのは社長のコピーではなく、社員が判断するための「型」です。
値引きなら「粗利率と年間影響額を見てから判断する」という型。見積なら「原価と想定工数から粗利率を確認してから提出する」という型。採用なら「採用コストと外注コストを比較してから判断する」という型。
この型を社員に渡し、型に沿って考えた結果を社長に報告する流れにすれば、社長の判断回数は激減します。
判断の型を渡す3つの方法
1つ目は、ルールブックを作ることです。値引き上限、受注基準、採用基準を文書にします。ただし、ルールブックだけでは現場の判断に対応しきれないことがあります。
2つ目は、社員教育で経営の数字を教えることです。粗利率、資金繰り、顧客価値を理解した社員は、自分で判断の根拠を持てます。ただし、座学だけでは定着しにくいのが現実です。
3つ目は、社員が迷ったときに相談できる仕組みを作ることです。上司やメンターに相談できる環境があれば、社長に直接聞く前にワンクッション入ります。最近では、AIに経営判断を相談できるツールも登場しています。自社の数字や方針を踏まえてAIが論点を整理してくれるため、社員が「何を見て判断すべきか」を学びながら仕事を進められます。
社長の時間が空くと、会社は次のフェーズに進む
社長の判断待ちが減ると、2つのことが起きます。1つは、社長が戦略的な仕事に時間を使えるようになること。もう1つは、社員が判断力を身につけて成長すること。
社長が忙しい状態は、短期的には回りますが、長期的には会社の成長を止めます。「社長、どうしますか?」を減らすことは、社員教育であり、組織改革であり、社長自身の時間を取り戻す投資です。
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